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国内仮想通貨ウォレット事業者の実態調査をブロックチェーンエンジニアが報告

ウォレット事業の多様性からリスクに応じた規制の細分化を後押し

(Image: Shutterstock.com)

 株式会社メルカリのエンジニア栗田青陽氏(にわタコ氏)は3月14日、「日本国内における仮想通貨ウォレットの実態調査」を作成したことを、自身のTwitter(@niwatako)で発表した。同書はCRYPTOASSETS GOVERNANCE TASK FORCEのサイトで、ディスカッション・ペーパーとして公開されている。金融庁が2018年12月まで設置した「仮想通貨交換業等に関する研究会」において議論された「仮想通貨カストディ業務に対する規制」を受けて作成されたもの。規制内容の妥当性を判断するため、栗田氏が国内の8つの仮想通貨ウォレット提供者に対してヒアリングを行い、実態調査を実施した結果が24ページにわたって報告された。本稿では、同報告書から実態調査部分を抜粋し、要約を試みる。

 調査背景について、簡単に説明する。金融庁が2018年3月から同年12月まで設置した「仮想通貨交換業等に関する研究会」では、仮想通貨カストディ業務に対する規制の必要性が検討された。同会では、仮想通貨カストディ業者に対して、仮想通貨交換業者と同等の厳密な規制を敷くことが結論づけられた。一方で、イノベーションを継続するために、多様な仮想通貨カストディ業務の実態と、それに伴うリスクレベルに応じた適切な規制の必要性も述べられている。

 実態調査は、国内における仮想通貨カストディ業者の中から、すでにサービスを展開している8つの仮想通貨ウォレット提供者に対して、栗田氏がヒアリングを行ったもの。事業の実態を報告することで、今後リスクレベルに応じた規制を策定する際の助けとなることを狙うという。なお、同書の記載内容は執筆者である栗田氏個人の見解であり、氏の所属団体が関与するものではないとのこと。

 先に結論を述べると、実態調査により判明した事実および規制による影響として、栗田氏は次の4点をまとめる。

  • ウォレットサービスは、現状では必ずしも収益性が高い事業とはいえない
  • 一部のウォレット事業者は、規制によって国内におけるサービス提供が困難になると考える
  • 規制によりウォレットサービスが終了した場合、利用者は海外のウォレットサービスに流出する可能性がある
  • トークンエコノミーサービスの展開に、オンラインウォレット機能が重宝されるため、イノベーションを阻害する可能性がある

実態調査について

 3つのオンラインウォレット事業者と、5つのソフトウェアウォレット事業者が、今回の実態調査に協力した。前者は事業者が秘密鍵を管理し、顧客の指示で事業者が仮想通貨の移転を行うオンラインサービス。後者は利用者のデバイス上で動作し、デバイス内で秘密鍵を管理するソフトウェアと定義づけられる。

 実態調査では、各事業者に対して「総預かり金額」「高額なやり取りの状況と金額」「サービスからの収入と支出」など、15項目の質問を行ったという。その結果をまとめたものが下表となる。

実態調査における各ウォレット提供者の回答一覧(栗田青陽氏記、日本国内における仮想通貨ウォレットの実態調査、P.16より引用)

 最初の着眼点は預かり総額と送金の規模となる。預かり総額は最小40万円から最大で50億円となる。高額送金に関しても同様に、最小数千円から最大で数千万円までと、たった8つの事業者の間でも大きな幅がある。それぞれで生じるリスクが全く異なることが実態として報告されている。

 最も高額を回答しているソフトウェアウォレットDについて、追加のヒアリングが実施された。数千万円規模の高額送金は、利用者自身の仮想通貨交換所の口座間で行われるものという推察が得られたとのこと。

 次に、ウォレットサービスの収益性を把握するため、収入と支出、運営状況について質問を行ったという。氏は回答を総合して「(実態調査に協力した)ウォレットは収益化された事業ではない」と結論づける。回答内容を元に、各事業者は下記の4つに分類される。

  • ボランティアの個人によって運営されているウォレット
    オンラインウォレットA、オンラインウォレットB、ソフトウェアウォレットA、ソフトウェアウォレットB
  • 法人によって人員の報酬なしで運営されているウォレット
    ソフトウェアウォレットC
  • 法人によって、他の事業によって人員の報酬を負担している状態で運営されているウォレット
    ソフトウェアウォレットD、ソフトウェアウォレットE
  • その他のウォレット
    オンラインウォレットC

 上記の内、「その他のウォレット」以外の7つの事業者は能動的な収入が発生していないか、収入を支出が上回っており、収益化していないと栗田氏は判断している。一方、オンラインウォレットCはトークンエコノミーサービスの一端としてウォレット事業を展開する。ICOによって時価4億3000万円の資金調達を実施している。現時点の収入と支出については未回答とのこと。

 オンラインウォレットCのトークンエコノミーサービスでは、現状のブロックチェーンでは要件を満たすことが難しいため、Webアプリケーションとして実装しているという。Webアプリケーションで処理を行うために、オンラインウォレット機能が必要になるとのこと。

 また、上記の質問に加えて各事業者に規制案に対する意見を募ったという。意見の中には、柔軟な規制を要求する声や「現状のサービスは継続不可」とするものがあったとのこと。前向きな意見としては、規制基準をクリアしたソフトウェアウォレット提供者に認可を出し、分散型取引所(DEX)との連携を行えるようにするべきといった意見も報告されている。

 以上が報告書の要約となる。同書の全文に関しては、栗田氏の下記ツイートよりご確認いただきたい。本稿では割愛したが、ウォレットの分類とその例なども詳細に記されている。


お詫びと訂正: 記事初出時、「日本国内における仮想通貨ウォレットの実態調査」がCRYPTOASSETS GOVERNANCE TASK FORCE(セキュリティ専門家と仮想通貨交換業者の関係者が設立した研究会)による公表という記載が漏れておりました。また、高額送金に関して「最小数万円から」と記載しておりましたが、正しくは「最小数千円から」です。お詫びして訂正させていただきます。