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新経連、ICO規制や仮想通貨税制の見直し求め提言書を金融担当大臣に提出

金融庁の規制案に対し規制対象の明確化・細分化を要求

 一般社団法人新経済連盟(以下、新経連)は2月14日、「暗号資産の新たな規制に関する要望」と題した提言書を金融担当大臣宛てに提出したことを発表した。本提言は金融庁が2018年12月21日公開した「仮想通貨交換業等に関する研究会」における報告書に対するものとして、新経連Fintech推進PTが作成した。

 新経連は一般社団法人Fintech協会と共同で1月23日、意見交換会を開催し、本提言をまとめたとのこと。提言内容はICO規制の緩和、税制面の緩和などを含む。新経連は金融庁の報告によって、暗号資産をめぐる規制の枠組みが示されたことは大きな意義があるとしつつ、新たな規制が日本の金融市場における、イノベーションの阻害となることを懸念して本提言を行うとしている。提言の内容は下記の5項目からなる。

  • 投資型ICOについて:「第一項有価証券」となる対象の明確化
  • 決済型ICOについて:発行体と交換業者の責任の明確化
  • カストディ業務について:規制対象となる範囲の明確化
  • デリバティブ取引について:第一種金商業による取り扱いの実現
  • その他(税制について):申告分離課税や損益通算等の適用

 以下では、公開された提言資料に沿って内容を解説する。

投資型ICO規制に関する提言(プレスリリースより引用、以下同)
決済型ICO規制に関する提言

 投資型ICOに関して、金融庁の規制案ではトークン表示権利を一律「第一項有価証券」と同様に扱うとされた。これに対して新経連は、当該トークンを取り扱うために「第一種金融商品取引業者」の登録が必要となるため、参入障壁が著しく高くなることを指摘した。スマートコントラクトや電子署名によって流通範囲を制限したトークンなどは「第二項有価証券」相当に扱うべきとし、線引きを明確化することを求めた。

 決済型ICOに関して、金融庁はICOトークンを取り扱う仮想通貨交換業者に対して、トークン発行者の情報や価格の算定根拠、発行者の事業計画などを、顧客向けに開示するべきとしている。これに対して新経連は、交換業者の責任が過大である点を指摘し、トークンの発行体と交換業者の責任を明確化することを求めた。また、「資金決済法上の仮想通貨該当性」をふまえて、既存の類似規制をそのまま適用せず、トークンの性質を考慮したルール設計をすべきとした。

カストディ業務の規制に関する提言
デリバティブ取引の規制に関する提言

 仮想通貨カストディ業務(旧称:ウォレット業務)に関して、金融庁は一律に仮想通貨交換業者に適用するものと同等の規制を敷くとしている。これに対して新経連は、カストディ業務の中には、個人間の送金取引等の用途で少額の仮想通貨のみを預かる業務等も存在し、規模の大小があることから、規制対象となる業務範囲を明確にすることを求めた。業務内容のリスクに応じた規制、あるいは規制適用範囲を定めるべきとした。

 仮想通貨交換所が提供するレバレッジ取引などが該当する、仮想通貨デリバティブ取引に関して、金融庁は金融商品取引法(金商法)と仮想通貨交換業の規制という二重の規制を敷くこととしている。これに対して新経連は、「現物仮想通貨の引き渡しを伴わない場合」という条件を定め、第一種金融商品取引業者が仮想通貨交換業者としての登録を受けずとも業務を展開できるようにするべきと提言した。

税制に関する提言

 最後の項目は金融庁の規制案とは直接関係しない、税制に関する要望となる。現在仮想通貨の取引によって生じる損益は総合課税の雑所得に分類されるため、最大で55%という高い税率が適用される。また、損益通算や繰り越しができない。一方、仮想通貨取引同様にリスクマネーの性質を持つ、株取引やFXの損益は申告分離課税が適用されるため、税率は約20%で損益通算も可能だ。

 新経連は暗号資産の市場拡大と技術の発展という観点から、仮想通貨の税制を総合課税から申告分離課税へ変更し、先述の株取引やFXと同等の扱いとし、仮想通貨間の交換を非課税とすることを求めている。