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コインハイブ事件で無罪判決。罪に問われていた男性が胸中をブログで明かす

警察の家宅捜査から判決が下るまで丸一年、家族や支援者に感謝の言葉も

(Image: Shutterstock.com)

 横浜地方裁判所は3月27日、Webサイトに専用のJavaScriptを設置することでサイト閲覧者のブラウザ上で仮想通貨Moneroをマイニングさせることができるツール「Coinhive」を、閲覧者に無断で自身のサイトに設置したとして「不正指令電磁的記録に関する罪」を問われていた男性に対して、無罪を言い渡した。罰金10万円を求刑していた検察側が一審の判決に対し控訴するかどうかは、今のところは未定である。

 ( 編集部注: 記事掲載後の2019年4月10日、無罪判決を不服として横浜地検が東京高裁に控訴したとのこと)

 この件で罪を問われていた男性はSNS等でモロ(@moro_is)氏と名乗り、家宅捜査を受けてからとこれまでを匿名でブログやTwitterにて報告をしていた。今回の「無罪」の判決に関しても、ブログにてその胸中を明かしている。

 そもそも「Coinhive」は、Webを閲覧するユーザーのCPUリソースをマイニングに回すことかできるため、広告代わりにユーザーにマイニングをしてもらうことで、広告収入の代替策になるツールとして注目されていたツールである。モロ氏が自身のWEBサイトに「Coinhive」を埋め込んで利用していたところ、無断でユーザーにマイニングをさせていることが不正指令電磁的記録(ウイルス)供用や保管などの疑いがあると判断され、昨年の2月に警察による家宅捜索を受けたのが、事の発端だった。

 モロ氏は、家宅捜査等やその後に略式起訴になるなど一連の経緯についてブログで報告し、それについて異議を申し立てる方向で動くということを明らかにしたことから、この件が世間からも注目されるようになり、各メディアにて報道されるまでとなった。

 その後、この検挙については法の乱用や恣意的な解釈であるなどの非難の声も上がり、波紋を呼ぶ事案として発展し、今回の判決が言い渡されるまで、その行く末が見守られる事態となった。この件については、「不正指令電磁的記録に関する罪」の立法にも携わられた高木浩光氏もブログにて報告している。

 今回の判決でモロ氏は、「不正指令電磁的記録に関する罪」には問われないことになったとするも(このまま控訴されなければ)、「少なくともモラル・マナーを欠いた、炎上していても文句の言えない浅はかなもの」だったとブログにて反省をしている。裁判中は「反省している」という言葉は故意を匂わせるものでもあるためうかつに言えず、「本当に申し訳ありませんでした」と謝罪が遅れたことや多くの人に不快を与えたことについて報告する姿勢が印象的だった。

 判決の言い渡しから2週間は検察側に控訴する権利があるため、現時点では推定ではあるがひとまずこの件が「無罪」になったことは喜ばしく、社会におけるこの一連の経験が、今後の技術やサービスが正しく使われるきっかけになり、ユーザーが安心して利用できる環境が構築されることにつながるといいのではないだろうか。

 奇しくも「Coinhive」は、仮想通貨「Monero」の暴落等から経済的に成り立たなくなったことなどを理由に3月8日をもってマイニングサービスを終了している。利用者がマイニング状況などを確認するダッシュボードは4月30日までアクセス可能とのこと。同ツールの歴史は、2019年の4月末に幕を下ろすという。