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メディアドゥ、ブロックチェーン活用の電子書籍流通基盤の実証実験を完了

PoCではHyperledger Fabricを採用。開発推進のためエンジニアの採用強化

(Image: Shutterstock.com)

株式会社メディアドゥは7月19日、ブロックチェーン技術を活用した新たな電子書籍流通プラットフォームについて、実証実験(PoC)を終え、プロジェクトのさらなる推進に向けてエンジニアの採用を強化する方針を明らかにした。実験段階の同プロジェクトにおいて、同社はコンソーシアム型ブロックチェーンのHyperledger Fabricを採用している。

株式会社メディアドゥホールディングスの子会社であるメディアドゥの電子書籍流通シェアは37%、LINEマンガやpixivコミックなどにコンテンツや流通基盤を提供している。電子書籍取次の分野においては国内最大手である。

同社が電子書籍の流通基盤において、ブロックチェーンの導入を推進する意味合いは大きく、新基盤の開発は最重要プロジェクトに位置づけて開発が進められているという。次の段階では商用化を視野といったところだろうか。現在はオフラインでの閲覧機能などを実装したWEBビューワーを開発中とのこと。

電子書籍市場は、インプレス総合研究所調べで2018年度予想2550億円まで成長している。一方で2018年にMMD研究所が実施した電子書籍の利用に関する調査結果によると、調査対象者のうち55.3%が「電子書籍を一度も利用したことがない」と回答したという。無形物である電子書籍と紙媒体との扱いの違いが、その理由として挙げられた。

紙の本では人から人への貸し借りや、読まなくなった本を中古として売ることができる。一方、現在普及している電子書籍は、紙の本と比べて販売価格自体は安く設定される場合が多いが、読んだらそれっきりだ。同社の新基盤は、この不便さや電子書籍自体への不安を解消し、1人でも多くの消費者に受け入れられることを目指すという。

今回の発表で同社が実現する機能として明言しているわけではないが、ブロックチェーンを用いて電子書籍の所有権をトークンで発行すれば、トークンの売買による中古販売やユーザー間の受け渡しが可能になる。トークンの発行数・流通量に透明性が担保されるため、ユーザーは本の人気度を客観的に量ることもできるだろう。

ブロックチェーンを活用して、電子書籍の海賊版対策や2次流通プラットフォームを構築という思想は古くからあり、国内外でいくつかの実証実験が行われている。直近では経産省の平成30年度補正予算にて株式会社TARTが電子書籍のトークン活用プロジェクトで助成金を受けることが発表されていた。これまでブロックチェーン事業の詳細を明らかにしてこなかったメディアドゥが、今回実証実験を完了済みと発表することは、けん制の意味合いもあるのではないだろうか。