仮想通貨(暗号資産)ニュース
CoinGecko、「トラストスコア」で仮想通貨交換所の取引高虚偽申告を是正
ウェブトラフィック統計活用でデータ補正。CoinGeckoレポートより
2019年8月19日 06:30
仮想通貨のグローバルランキングサイト「CoinGecko」は、仮想通貨に関する2019年第2四半期レポート(4月から6月の期間)を公開した。本稿ではレポート解説第3弾として、CoinGeckoが仮想通貨交換所の取引高を正確に把握し集計するために導入した「トラストスコア」に関する内容に絞って紹介する。
CoinGeckoは、5000種を超える仮想通貨の価格や評価のほか、300か所を超える仮想通貨交換所の取引高を、ランキング形式によるマーケット情報として発信するグローバルランキングサイトである。
CoinGeckoはランキングの作成に各仮想通貨交換所が公開する取引高を参照しているが、仮想通貨交換所が発表する取引高が実際の仮想通貨の流動量と必ずしも一致しない。規制されていない仮想通貨交換所の多くは、ウォッシュ・トレーディング(水増し取引)やその他の操作を行い、意図的に取引量を膨らませ、虚偽の情報を公開しているからだとCoinGeckoはいう。
そこでCoinGeckoは5月13日より、仮想通貨交換所の疑わしい取引高問題を解決するためにトラストスコアという新しい評価アルゴリズムを導入した。トラストスコアによって、各仮想通貨交換所の正確な取引高を取得することができるとのこと。
2つの評価アルゴリズムを持つトラストスコア
トラストスコアには、仮想通貨交換所の正しい取引高を取得することができる「修正取引高」のほかに、「取引ティッカー」という評価アルゴリズムがある。取引ティッカーは、オーダーブックを分析し、スプレッドや市場深度などの情報を元に流動性を判断することができるという。
修正取引高
修正取引高を求めるアルゴリズムは、正確な取引高を求めるためにSimilarWebなどサードパーティーサービスによって集計されたウェブ・トラフィック統計データを利用している。その理由は、第三者による統計データを偽造することは困難であるということに起因する。また、不正行為を抑止するためにも複数のデータソースを利用すべきであるとCoinGeckoは主張する。
具体的には、CoinGeckoがレポートするすべての仮想通貨交換所について、SimilarWebから毎月のウェブ・トラフィックを集計し1日の平均トラフィックを取得。平均トラフィックと仮想通貨交換所から報告される取引量情報を組み合わせ、各交換所の平均日次ユーザー取引量(ADUTV)を算出する。さらに10回のADUTVから中央値(ベンチマーク)を計算し、ベンチマークに基づき仮想通貨交換所の正規化された合計取引量を導き出すというのだ。
同社のレポート公開資料には、交換所の申告によるランキングトップ5とトラストスコアによって正規化されたトップ5がそれぞれ示されている。資料を見ると、トラストスコアを導入することで大きな変化があることがわかる。トップ5の取引高はトラストスコアによって80%ほど下方修正され、234億円(申告ベース)から48億ドル(正規化)となっている。
取引ティッカー
取引ティッカーは、仮想通貨交換所の各通貨ペアの流動性を視覚化することができるという。取引ティッカーのアルゴリズムは、オーダーブックを分析する。通貨ペアのBID(売値)/ASK(買値)スプレッドおよび±2%の深度コスト(最終取引価格を2%上下させるのに必要なコスト)に修正取引量データを組み合わせることで、取引ペアの実際の流動性を導き出すことができる。
導き出されたデータにより、高確率で取引が可能な流動性、まずまずの取引ができる流動性、取引がほぼ不成立となる低い流動性の三段階で、各通貨ペアの流動性を評価することができるというのだ。
このようにトラストスコアを導入することにより、より透明性の高いデータを取得することができるようになり、仮想通貨交換所を正しく評価することができる。疑わしい仮想通貨交換所を見抜き、より良い意思決定ができるというのだ。
なお、CoinGeckoによる仮想通貨に関する2019年第2四半期レポート解説第1弾では、仮想通貨Libraに関する報告、第2弾では仮想通貨交換所に関する報告を記事にしているので、そちらも併せて読んでいただきたい。