仮想通貨(暗号資産)ニュース

2019年上半期の仮想通貨交換所ハッキング被害は総額88億円相当。通算1400億円超

破産だけでなく中央銀行の要請で閉鎖する交換所も。CoinGecko仮想通貨交換所概観レポートより

仮想通貨のグローバルランキングサイト「CoinGecko」は、仮想通貨に関する2019年第2四半期レポート(4月から6月の期間)を公開した。本稿ではレポート解説第2弾として、仮想通貨交換所に関する内容に絞って紹介する。

仮想通貨交換所概観(CoinGeckoの2019年第2四半期レポートより引用、以下同)

5000種を超える仮想通貨の価格・評価・ランキングをマーケット情報として発信するCoinGeckoは、情報収集のために世界各地の仮想通貨交換所を観測している。レポートでは、2018年より急増する仮想通貨交換所について、その概観を報告する。

2014年より仮想通貨および交換所を観測するCoinGeckoは、2017年までは45か所の仮想通貨交換所を観測してきたという。ところが現在はその数は347か所(2019年6月現在)にまで膨らんでいるという。2018年からわずか約18か月で302か所の新規交換所を追加し、観測するようになったというのだ。

2019年上半期ハッキング被害は総額8300万ドル

2019年上半期の仮想通貨交換所ハッキング被害

レポートでは、2019年上半期の仮想通貨交換所に対するハッキングについて報告する。

上半期の仮想通貨交換所に対するハッキング被害は、総額で8300万ドル相当、1ドル=105.9円のレートで87億8800万円にもおよぶ。中でも最大なのは、5月に起きた仮想通貨交換所「Binance」に対するハッキングで、被害額は4000万ドル相当、史上6番目の被害規模になる。その他には、1月に起きた「Cryptopia」での1600万ドル相当の盗難、3月の「bithumb」で起きた1300万ドル相当の盗難など、全5件のハッキング被害を報告している。仮想通貨交換所におけるハッキングの被害は、史上総額13億5000万ドル相当(1400億円以上)にもおよぶという。

さらにレポートは、上半期に閉鎖された仮想通貨交換所についても報告をする。上半期は、9か所の交換所が閉鎖に追い込まれている。

特筆すべきは、インドの3か所の仮想通貨交換所「Coindelta」「Coinome」「Koinex」。これらは、インド中央銀行(RBI)からの要請で閉鎖を余儀なくされたという。また、1月に1300万ドル相当の盗難被害にあったニュージーランドの「Cryptopia」は、5月に破産し、その後は閉鎖に追いやられた。

その他にも倒産した交換所が3か所、突然閉鎖した交換所がスキャム(詐欺)として2か所挙げられている。ちなみにスキャムに挙げられたアイルランドの仮想通貨交換所「Bitsane」は閉鎖後、顧客に対して資金の返還などを行っていないという。

仮想通貨交換所「Binance」へのハッキング詳細

「Binance」へのハッキング詳細

CoinGeckoは、仮想通貨交換所「Binance」にて発生したハッキングについての詳細をレポートする。

5月7日に発生したハッキングによる被害は、ホットウォレットに保有するBitcoinのうち、7070BTCが不正流出。日本円にして40億円相当以上、BinanceのBTC保有量の2%が盗まれたという。

ハッカーはフィッシング、コンピュータウイルス、その他の攻撃方法を用いて、多数のユーザーのAPIキー、2FAコード(2段階認証キー)、その他の情報を段階的に収集し、複数のアカウント上で入念に計画された攻撃を実行。Binanceのセキュリティチェックを迂回する方法で、トランザクションを生成したそうだ。

Binanceはハッキングの対応策として、すべての入出金を1週間停止。同社CEOのChangpeng Zhao氏は、複数のグループから被害を補填するための義援金の提案を受けるが、今回の損失はすべて取引手数料から積み立てられた保険金(SAFU)によりカバーしたという。

また、レポートはBinanceが提供する分散型取引所「Binance DEX」についてもまとめている。

Binance DEXは、Binanceにより開発されたブロックチェーンBinance Chain上で動作する分散型取引所。Binance Chainは、アセットトレード用として作られ、パフォーマンス、使用しやすさ、流動性にフォーカスしているという。

Binance DEXは、仮想通貨交換所Binanceに似たユーザーインターフェースで動作するが、分散型取引所が交換所と異なるのは、DEXには基本的に管理者はおらず、ユーザー同士が直接自身のウォレット間で仮想通貨の取引を行うものだという。諸般の事情により、アメリカほか28か国(レポートのまま)からのIPアドレスをブロックし、サービスが利用できないようになっている(現在は日本からのアクセスも不可)など、Binance DEXの特徴についてレポートしている。

なお、CoinGeckoによる仮想通貨に関する2019年第2四半期レポート解説第1弾では、仮想通貨Libraに関する内容に絞って報告しているので、そちらも併せて読んでいただきたい。