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電話番号転出のブロックチェーン活用にHyperledger加盟のウィプロが取り組む

個人情報の安全性向上・不通時間の短縮・プリペイド残高の繰り越し

(Image: Shutterstock.com)

インドのIT大手ウィプロは8月26日、Hyperledgerの公式ブログにて、同社が取り組むナンバーポータビリティ(NP)へのブロックチェーン活用について報告した。携帯電話の場合MNPと略されるNPは、通信事業者を変更してもユーザーが同じ電話番号を利用できる仕組みだ。通信事業者間で顧客情報のやり取りが生じるため、一定のリスクが伴う。ブロックチェーンを活用することで、より安全かつ迅速に電話番号の移行を実現することができるという。

国内でMNPをすると、数時間程度電話番号を利用できない期間が生じる。この間に通信事業者が何をしているかというと、ユーザーの登録情報の移行に関わる事務手続きや、移行先での接続性のテストなどを行っている。海外でも同様だが、国内のMNP事情ほど整備されていないようだ。ウィプロがHyperledger Fabricを活用して目指すのは、NPプラットフォーム上での金銭的価値の移転と、こうした事務処理の効率化だ。

2017年からHyperledgerプロジェクトに加盟するウィプロは、現在複数の通信事業者と共にNPプラットフォームの開発に取り組んでいるという。複数の事業者が関わるNPにおいて、特定の事業者間で情報の透明化を行えるブロックチェーンは力を発揮する。

現状のNPの仕組みにはいくつかの課題があるとウィプロはいう。例えばプリペイド型の契約時に電話番号の転出を行うと、電話番号にひも付いたプリペイド残高は失われてしまう。これはNPの仕組みが金融取引や価値の交換の機能を持っていないからだ。また、通信事業者間での顧客データのやり取りを仲介業者を経由して行うなど、プロセスの複雑化による問題も見受けられる。

NPに関する規制当局も事業者のプロセスの複雑化によって監査に支障が出ている。転出手続きの遅れによるユーザーからのクレームや、それに対する罰則対応、さらには事業者による規制違反への対応を行っているのが当局だ。契約のプロセスが複雑化することで、余計な人的・時間的コストが生じているという。

こうした課題を解決するために、Hyperledger Fabricが持つデータ共有範囲の限定機能や十分高いスケーラビリティが、プラットフォームとしての条件を満たしていた。プロセスの複雑化が解消すれば、通信事業者は事務手続きをより短い時間で処理できるようになり、結果的にユーザーはNPにおける不通時間のさらなる短縮という恩恵を受けられる。さらにNPに関する規制当局視点でも、関わる仲介業者減り、各社の契約プロセスがことで監査のコスト削減や精度向上につながる。

ウィプロが開発するプラットフォームは、以下の5点で従来のNPの仕組みを刷新するとしている。信頼関係がない当事者同士で、仲介者なしで情報と価値の交換を実現する。情報と価値に限定的な透明性を持たせつつ安全にやり取りでき、NPのプロセスを簡素化することを目指す。

  • 移行プロセスの簡素化
    仲介業者を介さずに事業者同士でP2Pの顧客データやり取りを実現
  • 顧客データの安全な交換
    ブロックチェーン特有の耐改ざん性により交換する顧客データの安全性を担保
  • ブロックチェーンによる金融取引の実現
    プリペイド契約者の残高を事業者間で移転可能にする
  • 運用コストとルーティングコストの削減
    電話番号の転出に用いる仮番号であるルーティング番号をブロックチェーン上で管理することでルーティング関連のコストを削減
  • 当事者間に限定した完全な透明性の実現
    通信事業者、規制当局、ユーザーが手続きプロセスの進捗をリアルタイムに確認可能

ウィプロがプラットフォームに活用するHyperledger Fabricは、Linux財団が主導してオープンソースで開発しているブロックチェーン(分散型台帳)技術プラットフォームにおける派生プロジェクトの1つだ。3大コンソーシアム向けブロックチェーン技術の1つにも数えられる。8月27日にマイナーアップデートとしてバージョン1.4.3を公開している。