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イーサリアムの次期アルゴリズムProgPoWの安全性監査が完了

現行技術のASICに対し一定の耐性。設計通りの性能を実現と評価

(Image: Shutterstock.com)

Ethereumの次期合意形成(コンセンサス)アルゴリズム「ProgPoW」の安全性に関する監査が完了した。ソフトウェア面で検証を行ったLeast Autority(リーストオーソリティ)社は9月9日付けで監査結果を報告した。同日、ハードウェア面での検証を担当したボブ・ラオ(Bob Rao)氏も監査結果を公開している。

ProgPoWについては、記事『EthereumのASICマイニング耐性を高める次期アルゴリズム「ProgPoW」とは?』で説明しているため、本稿では省略する。簡単に言うと、ASIC耐性を高めるアルゴリズムだ。ProgPoWでは、ASICマイニングの優位性は、理論的上従来の2倍から1.2倍程度まで減少すると予想されている。

ソフトウェアの検証

リーストオーソリティは、ProgPoWが「ASIC耐性とGPUマイニングの重視」を、設計どおりの適切なレベルで実現していると結論づけた。ASICによる集中的なマイニングは緩和され、Ethereumのネットワークを再び分散化させ、セキュリティを引き上げると予想している。

一方で、日進月歩で進化するハードウェアに対し、長期的な視点ではProgPoWのASIC耐性は完全とは言い切れないという。致命的な欠陥は見られなかったが、いくつかの領域ではセキュリティリスクの可能性があり、追加の検証を行うことも推奨した。

ハードウェアの検証

ラオ氏のハードウェアレポートでは、ProgPoWのASIC耐性が、膨大なメモリの消費量に依存していることを説明し、複数種類のGPUを用いた動作検証をまとめた。ラオ氏も、ProgPoWは現行の技術で製造されるASICに対しては一定の耐性を持つものの、将来的にはProgPoWに対応したマイニング機器が出現する可能性を懸念している。

監査の背景

今回の監査は、Ethereum Cat Herdersの主導により、Ethereum財団、Bitflyとコミュニティの有志からの出資により、セキュリティ監査会社リーストオーソリティおよびバオ氏へ正式に依頼されたものである。ProgPoWを巡ってはコミュニティ内でも意見が分かれたため、第三者機関による正当な評価が必要との判断だった。

ProgPoWは、Ethereumの次々回のアップデート「Berlin」(ベルリン)で実装される予定だが、まだ確定はしていない。今後開発者らは提出された監査報告を元に、実装に関する議論を進めていく。9月6日のコア開発者会議では、ProgPoWのいくつかの設計について、安全性の観点から見直しが行われている。

ProgPoWには、Ethereum 2.0への移行措置という側面もある。Ethereumは2020年から2021年頃実装と目されるEthereum 2.0において、コンセンサスアルゴリズムをPoW方式からPoS方式へと移行する予定である。移行の中途においては、現行のEthereum 1.x側のハッシュレートが著しく減少することが想定される。その際、51%攻撃への対策として、ProgPoWは集中的なマイニングを防止することも期待されている。

そうした背景にあるため、ProgPoWは長期間実用されない前提で設計されている。Ethereum 2.0の開発が頓挫しない限り、ASIC耐性に対する将来的な懸念は、大きな問題にならないだろう。