仮想通貨(暗号資産)ニュース

なぜ米テキサス州が仮想通貨マイニング事業の新天地になりつつあるのか?

ビットメインやLayer1がテキサス州にマイニング工場を建設する理由

(Image: Shutterstock.com)

Bitcoin(ビットコイン)の相場価格が1BTC100万円台と盛り返して以来、それまで下火になりつつあった事業としての仮想通貨マイニングが再び脚光を浴びている。

8月には米Blockstream社がクラウドマイニングとマイニングプールを新たなサービスとして提供を開始した。また、9月には中国カナン社がGPU比5倍以上のイーサリアム用マイニングマシンを発表している。

しかし、最も注目を集めたのは、中国の世界最大の仮想通貨マイニング企業Bitmain(ビットメイン、比特大陸)が、米テキサス州ロックデールに50メガワット級のマイニングファーム建設を始めたという報道ではないだろうか。将来は同地で世界最大の300MWまで拡大する計画もあるというのだ。

驚いたのは、その規模の大きさもさることながら、中国のマイニング企業が米テキサス州にてマイニング事業を開始するということそのものだ。なぜ、テキサス州なのだろうか?

そもそもマイニング事業は、他社との計算力勝負になるため、事業として成立させるには、大規模なマイニングファームを構築する必要がある。それには広大な敷地とマイニングマシンを駆動させるための安価な電力の供給が必須であるとされている。マイニングマシンを冷却するためにも、できるだけ寒冷地が望ましいということもあり、これまでは中国であったり、北欧に拠点を構えるのが常識だったからだ。

しかし、これからはテキサス州だという流れができつつあるのだ。

なぜ、テキサス州なのか?

実は、その理由について、会員制オンラインサロンのビットコイン研究所が面白い考察を掲載している。10月24日の「マイニング施設の所在地としてのテキサス州」という記事なのだが、興味深いので紹介してみたい。

ビットコイン研究所によると、その始まりはビットメインのマイニングファーム建設開始(計画の発表は昨年夏)の報道の前に発表された、米サンフランシスコのスタートアップLayer1 Technologies(Layer1)の事業計画について触れている。

Layer1は、2018年にPayPal(ペイパル)の創業者であり投資家であるピーター・ティール(Peter Thiel)氏やDCG(Digital Currency Group)に210万ドルのシード投資を受けたスタートアップだ。Layer1はシリーズAで5000万ドルの追加出資を受け、マイニング関連事業を行うという。テキサス州の安い電力でビットコインをマイニングするのみならず、独自のASICを開発することによってASICの安定供給を確保、自前の変電所まで建設するなど、マイニングに関する垂直統合を行うというのだ。

Layer1自身も、それについてはツイッターにて報告をしている。ツイッターによると、2億ドルの資金調達に成功していることが告げられている。

Layer1が報告する業界調査によると、ビットコインのハッシュレートの60%以上とマイニングマシンハードウェア生産の100%が中国であり、米国はビットコインのハッシュレートの5%未満だという。Layer1は、今回の計画はビットコインの中央集権化を避ける意図があるとしている。

一方のビットメインは、昨年夏頃からテキサス州ロックデールに5億ドル規模の施設を建設する計画があったが、ビットコイン価格の暴落等、諸事情により計画が頓挫していた。当初は、施設は500MW級と超巨大で、32万5000台のASICマイナーを置き、雇用を400人から600人程度確保するという計画だった。一時はプロジェクト継続が危うい状態だったが、再び発表され新たな計画が最初は25MW、順次50MWへと拡張し、将来的には300MWも視野に入れるというものだった。

ビットコイン研究所は、ビットメインのテキサス州進出の理由をこう告げている。

ビットメインは、ロックデールに半世紀ほどの間あったAlcoaというアルミニウム工場の跡地を利用する。アルミニウム工場は大量の電力を使うため、電力インフラはすでに整っていることと、併設されていた発電所の冷却池をASICの冷却に転用できることがコスト削減に繋がるためだとした。

テキサス州の電力事情

また、テキサス州の電力事情についても詳しい。

テキサス州の電力供給量は2位の州に大きく差をつけ、米国ナンバーワンだという。また、ビットメインが使用予定である業務用電力は、米国50州のうち、4番目に安く、1kWhあたり4セント台から契約できるそうだ。これは日本の4分の1で、マイニングが盛んな中国と同レベルだという。

テキサス州では石油や天然ガスが産出されることから、エネルギーの調達コストが低い。しかし、地理的条件が悪く州外への送電が難しいため、電力価格競争が激しいことも低価格に貢献している理由だという。また、Layer1の発表では、自然エネルギーも活用して電力コストを下げるとある。

テキサス州がマイニングの新天地として注目を集めているが、テキサス州は暑いためASICの冷却問題を常に抱える。それが解決できれば電力の安さから人気のマイニング地域となる可能性があるだろうとのこと。いずれにせよ、マイニングの地理的な分散が進むことが望ましいとビットコイン研究所はまとめている。