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日銀と欧州中銀、分散型台帳での取引情報秘匿化と管理を検証

プロジェクト・ステラの調査報告第4弾を公開

(Image: Takashi Images / Shutterstock.com)

日本銀行と欧州中央銀行(ECB)は2月12日、分散型台帳技術(DLT)に関する共同調査プロジェクト「プロジェクト・ステラ」(Project Stella)第4フェーズの調査結果を報告した。報告書「分散型台帳環境における取引情報の秘匿とその管理の両立」(原題:Balancing confidentiality and auditability in a distributed ledger environment)を公開した。

プロジェクト・ステラは、2016年12月に日銀とECBによって共同で立ち上げられた。DLTの金融市場インフラへの応用可能性に関する共同調査を目的としている。国内においては、銀行間の為替取引で使われる「全銀ネット」、日銀が運営する「日銀ネット」などを、金融市場インフラとして想定。金融市場をめぐる技術環境が激変していることを踏まえ、その影響を研究するのが狙い。

プロジェクト・ステラでは検証を着々と進めており、第4フェーズでは、DLTにおいて取引情報の秘匿化と確認可能性をどう両立させるかという問題に取り組んでいる。報告書は、DLTに基づく金融市場インフラの取引を、「プライバシー強化技術(PET)」で秘匿化する方法とその確認可能性を確保する仕組みについて調査し、まとめている。

PETの3分類(リリースより引用、以下同)

第4フェーズでは、取引の秘匿化に用いるPETにより秘匿化された取引が、実効的に確認可能であるかを評価する3つの方法を提案。まずは、取引情報を秘匿化する手法のアプローチの違いに基づき、「共有先制御型PET」「非可読化型PET」「関係性隠匿型PET」の3分類に整理する。

ちなみに、共有先制御型PETは、各参加者がネットワーク上の全取引の一部のみアクセスできる手法。非可読化型PETは、暗号化技術を用いることで、第三者が取引情報を解釈できないようにする手法。関係性隠匿型PETは、台帳に記録された送金者・受領者情報から、第三者が取引当事者を特定することを困難にする手法となる。

評価方法として、各PET手法によって秘匿化された取引情報を、確認者は取引確認に必要な情報を確実に取得できるかの「必要情報の取得の確実性」、確認者は取得した情報を用いて秘匿化された取引情報を確実に解釈できるかの「取得情報の信頼性」、取引確認プロセスは実現可能な程度に効率的かの「取引確認プロセスの効率性」の3つの観点から、それぞれの確認可能性を調査している。

取引確認の大まかな流れと3つの観点

これら観点から取引確認プロセスを評価すると、PETの実装方法によって確認可能性の度合が異なるということがわかった。実装方法により、取引確認が不可能なものもあり、一方では実効的な取引確認が可能なものもあるという。

実効的な取引確認は、確認者が信用できる情報保有者から必要情報を取得するか、確認者が特定可能な参加者から必要情報を取得し、その取得情報の正確性を台帳に記録された情報を用いることで検証可能になる。これらのプロセスを、過大なリソースを消費せずに実行可能である場合に取引の秘匿化と管理を両立できると結論づけた。

報告書には、その他にもPETに関する実機検証、技術的解説等、より詳細な調査報告が掲載されている。詳しく知りたい方は一読されてはいかがだろうか。

プロジェクト・ステラでは、2017年9月の第1フェーズはDLTを用いた大口資金決済を、2018年3月の第2フェーズはDLT環境における資金と証券のDVP決済を、2019年6月の第3フェーズ3はクロスボーダー送金の安全性等の検証を、それぞれ報告書として発表済みである。