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日銀副総裁「中銀デジタル通貨発行の計画はないが調査研究は行っていく」

キャッシュレス化における民間部門のイノベーションの阻害などを懸念

(Image: Shutterstock.com)

日本銀行・副総裁の雨宮正佳氏が7月5日、ロイター通信とリフィニティブが主催し、東京都内で開催したカンファレンス「ロイター・ニュースメーカー」にて講演を行った。雨宮副総裁は「日本銀行はデジタル通貨を発行すべきか」と題したテーマで登壇し、日銀が「Central Bank Digital Currency」(中央銀行デジタル通貨、CBDC)を発行する計画はないものの、調査研究は行っていくとして、その背景を説明した。

国際決済銀行が行った調査によると、世界の63の中央銀行のうち、約7割がCBDCに関する取り組みを行っている。その多くは調査・研究や実験・概念実証が主目的だ。CBDCの発行を積極的に目指しているのは、銀行券の流通が減少している国か、銀行券に関するインフラが十分に整備されていない新興国など一部の国に限定されるという。

中銀デジタル通貨に関する調査結果

日本は銀行券の整備度合いで言うと、世界でも最高水準にある。GDPに対する現金流通高は世界最大であり、可住地面積あたりの金融機関店舗数も世界3位である。また、キャッシュレス化は2018年9月時点で約50%まで進んでいるが、約半分の決済は現金に依存している。こうした背景にあって、「多くの国民に使用されている現金を無くすことは、決済インフラを不便にすることに他ならない」(雨宮副総裁)として、CBDC発行によるキャッシュレス化の推進を望まないことを説明した。

金融機関の店舗数(図左)と現金流通高(図右)に関する国際比較
個人消費支出の決済手段

雨宮副総裁はキャッシュレス決済手段の林立状態についても言及している。中央銀行がCBDCを発行すれば、決済手段をある程度収束できる可能性はあるという。しかし、現在はFinTech企業や銀行が互いに競争し、決済のイノベーションを進めている途上であり、「情報技術面で優位にある民間部門のイノベーションを促進していくことが重要」(雨宮副総裁)として、中央銀行が介入すべき段階ではないという姿勢を示した。

日銀がCBDCの調査研究を進める理由の一つは、キャッシュレス化の状況によってCBDC発行の必要性が急速に高まる場合に対処するためだ。もう一つは、CBDCというレンズを通して、「お金とは何か」を考察し、決済システム全体を改善していくヒントを得るためだという。

そうした観点から、日銀は欧州中央銀行と共同で「プロジェクト・ステラ」の研究に取り組んでいる。これまでに中央銀行の当座預金を用いた資金決済に対する分散型台帳技術の応用可能性として3本の報告書を公表した。一方、法律面では、日本銀行金融研究所が2018年11月に「中銀デジタル通貨に関する法律問題研究会」を設置した。同会が近日中に報告書を対外公表する予定であることを明らかにしている。