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日銀がデジタル通貨を発行しても中銀としての役割は不変

日銀副総裁がCBDC発行で「変わること」「変わらないこと」を整理

(Image: Shutterstock.com)

日本銀行決済機構局は2月27日、金融機関や企業における決済に係わる従事者を募集し議論する会合「決済の未来フォーラム」を開催した。本行では日銀副総裁の雨宮正佳氏による「中銀デジタル通貨と決済システムの将来像」とした講演について要点をまとめる。

雨宮副総裁は、中央銀行がCBDCを発行すべきかどうかは重要な検討課題だとし、中央銀行マネーの将来における「変わること」と「変わらないこと」について整理した。

変わらないこと

中央銀行マネーが将来CBDCになったとしても、「マネーの基本的な仕組み」「通貨供給の二層構造」「中央銀行の基本的な役割」の3つは“変わらないであろう”という。

特に通貨供給の二層構造は、変えるべきでない、維持すべきものだ。通貨の二層構造とは、中央銀行が現金と中央銀行預金からなる中銀マネーを一元的に供給し、民間銀行はこの中銀マネーを核とする信用創造を通じて、預金通貨を供給する仕組みである。

この仕組みのもとでは、経済への資金配分が民間イニシアチブを通じ効率的に行われる。決済サービスにおいては、民間イノベーションの力が発揮されるメリットがあるという。

ノンバンク決済事業者の発行するマネーは、通貨供給の二層構造においては、現金や銀行預金との等価交換により創出される。発行者が多数存在することで、金融サービスの提供全般における競争のメリットは維持される。

キャッシュレス化が進展し、現金の流通高が大幅に減少したとしても、中央銀行は、通貨供給の二層構造のもとで、中銀当座預金というデジタルマネーのコントロールを通じて金融政策を遂行するとともに、「最後の貸し手」機能を果たしていくことになる。

変わること

変わるものの1つは、決済を担う事業者の多様化だ。近年のキャッシュレス決済を牽引しているのは、銀行よりも、フィンテック企業、交通系・流通系企業などノンバンク決済事業者が多い。決済事業者の多様化は、金融規制のあり方や、中央銀行・民間双方の決済インフラの運営に、様々な影響を与えることになる。

そして、変化の象徴となるのが「マネーとデータの接近」という現象だ。

従来の決済は、買い物の支払いという一定の経済価値を授受することだった。しかし、ノンバンク決済事業者の多くは、キャッシュレス決済サービスの提供により、顧客の利便性追及のほかに、関連ビジネスに顧客を誘導し、ネットワーク効果を通して自社のエコシステムの拡張を図るという戦略を取っている。

新たな決済サービスは、経済価値を授受する以外に、誰が、いつ、どこで、何を買ったか、場合によっては、ウェブサイト上で宣伝されている商品を閲覧するだけで買わなかった、といった関連データも授受するようになっているという。それが「マネーとデータの接近」という現象であると解説した。

それだけに、決済システムやマネーの将来を考える際には、個人情報の保護やその有効活用をどう考えるかという論点が、一層重要になってくると雨宮副総裁は語った。