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NayutaがLightning Network実装Ptarmiganのメインネット版をリリース

RasPi Zeroで動作

 株式会社Nayutaは、Lightning Networkの仕様を実装したソフトウェア「Ptarmigan」のメインネット版をリリースした(発表資料)。

 Lightning Networkは、Bitcoinのブロックチェーンの「ひとつ上」の層(「レイヤー2」、「2nd Layer」と呼ばれることもある)で動く決済ネットワークだ。Bitcoinそのものに準じる安全性(耐攻撃性)を備えながら、決済を即時に確定し、性能の上限がなく、手数料の水準がきわめて低価格になる特徴を備えている(関連記事)。

NayutaによるLightning Networkの動作の解説動画

検証のためAzureマーケットプレイスで公開、電子工作にも対応

 今回の「Ptarmigan」は、「Reckless version」(一種のベータ版)と位置づける。このバージョンの利用者や開発者を集めフィードバックを得るため、同社は次の2つの施策を用意した。

(1)クラウドサービスMicrosoft Azureの「マーケットプレイス」で公開し、簡単に起動できるようにする。初期導入を容易にし、開発者が検証に取り組むハードルが低くなる。

(2)Lightning Networkを活用した電子工作を手軽にできるよう、PtarmiganをインストールしたRasPi Zero(Raspberry Pi Zero、Linuxが稼働する低価格のボードコンピュータ)とArduino(低価格の制御用ボードコンピュータ)を結ぶ基板「Lightning Shield for Arduino」を限定100個、原価でユーザーに提供する。2018年7月上旬発送予定。

 この基板には2.7インチの電子ペーパーディスプレイを搭載、Invoice(Lightning Network用の「請求書」)をQRコードで表示、スマートフォンアプリで読み取って送金する使い方が可能となる。この基板を応用すると「Lightning Network対応レジ」のモックアップを手軽に構築することができる。Ptarmiganの特徴は、ソフトウェアのフットプリント(サイズ)が小さくRasPi Zeroでも稼働することだ。

Lightning shieldのデモンストレーション動画

「世界で4番目」のBOLT準拠メインネット版

 日本のスタートアップ企業がLightning Networkの仕様を実装したソフトウェアを開発、リリースしたことの意味はなんだろうか。

 Lightning Networkの仕様をBOLT(Basis of Lightning Technology)と呼ぶ。Nayutaの「Ptarmigan」は、他社の実装と同じく、オープンソースソフトウェアとして公開する(GitHub)。BOLTに準拠するLightning Networkソフトウェア実装として、カナダBlockstream社(c-lightning)、米Lightning Labs(Lnd)、仏ACINQ(eclair)に続き、世界で4番目となる。

 Nayuta代表取締役の栗元憲一氏は、Lightning Networkの仕様であるBOLTの仕様策定に参加し、実装を開発・公開する意味について次のように話す。「(Lightning Network仕様の)BOLTは非常に複雑で、並行処理などをきちんと理解して実装するのは大変だ。自ら実装に参加することで、初めて同じ土俵に立てる。実装経験は、その上の付加価値を提供する上でも欠かせない」。

 Lightning Network実装は各社がオープンソースで公開している。各社ともプロトコルの実装そのものを販売する訳ではなく、Lightning Network上で付加価値を提供するプロトコルやアプリケーションを作るビジネスモデルを考えている。Nayuta自身も、Lightning Network上で付加価値を提供するミドルウェアを構想中だ。

 そこで「同じ土俵」に上がるためにはLightning Networkの実装経験が必要だというのが、Nayuta栗元氏の考えだ。「プロトコルの仕様策定と実装に参加することで、はじめて開発者コミュニティの一員と認めてもらえる」(栗元氏)。

 Lightning Network実装に取り組むことは「(インターネットの基本プトロコルである)TCP/IPの開発に参加するようなイメージ」だと栗元氏は説明する。インターネット普及の初期段階では、TCP/IPプロトコルを深く理解、実装した一部のベンダーや開発者らが重要な役割を果たした。Lightning Networkの今後のサービス展開では、BOLT仕様の実装に参加する少数のベンダーが大きな役割を果たしていく可能性があるといえるだろう。