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仮想通貨における16の課題。この5年間の歩み

イーサリアム創設者ヴィタリック氏の考え

(Image: Shutterstock.com)

Ethereumの考案者であるヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏は11月22日、「Hard Problems in Cryptocurrency: Five Years Later」と題して、直近5年間の仮想通貨関連技術の歩みをまとめるブログ投稿を公開した。ブテリン氏は暗号論、コンセンサス理論、エコノミクスの3つのカテゴリからなる16の技術や理論に言及。多くは前進している中で、特にエコノミクスの議論はここ5年で大きく前進したとしている。

16の課題リストは、仮想通貨、特にはEthereumのエコシステムにおける解決すべき課題として、ブテリン氏が2014年にまとめたもの。5年が経過した今、それぞれの分野でどのような進歩があったのか、氏なりの視点でまとめている。

暗号論の課題

暗号論の課題で代表的なものは、ブロックチェーンのスケーラビリティだが、理論的な進歩があり、実世界での評価に向けて進行中とブテリン氏は評している。この進歩には、5年前には見当もつかなかったシャーディング技術などが含まれる。ほかにも、SNARKなどが分類される任意の計算証明(Arbitrary Proof of Computation)分野も順調だ。

ネットワーク上のタイムスタンプ誤差をさらに縮める研究や、署名アルゴリズムの改善に関しては、いくつかの理論が登場したもののテスト前の段階にあるとして、今後進歩が期待される。一方、コードの難読化に関しては難航しているという。

コンセンサス理論の課題

コンセンサス理論には、PoW(プルーフオブワーク)やPoS(プルーフオブステーク)に代表される合意形成アルゴリズムの開発などが含まれる。順調に進歩したのが、「ASIC耐性を持つPoWの開発」と、「PoSの開発」だ。いずれもEthereumおよびEthereum 2.0のメインネットへの実装はそう遠くない将来に計画されている。

現行の合意形成アルゴリズムでは、計算能力や保有通貨を根拠とするが、代わりにストレージと帯域幅を用いるProof of Storageという理論がある。この分野では理論的には多くの進歩があったが、完成はまだ先と予想される。一方で、PoWを意味のあるものにするという取り組みは、ほぼ頓挫したと考えられている。マイニングの計算力を割り当てるべき対象が見当たらないのだとか。

エコノミクスの課題

仮想通貨を用いた経済に関しては、ステーブルコインなど多くの課題が解決に向けて進行中とされている。公共財の購入にかかる資金調達を分散的に行う手法の研究や、分散型の選挙システム、分散型の貢献度測定基準、現実変数の分散的測定手法の開発が進行中だという。

一方で、評判システムと呼ばれる、人々の相互作用の記録からソーシャルな評価を下す仕組みの研究に関しては、ほとんど進展がない。また、Proof of excellenceという概念は文字通りロストテクノロジーと化した。つまり、忘れられた。これは人が特定のタスクを行うことで報酬を得る権利を形作る仕組み。だが、人間の創造性を数学的に検証することは困難で、トークンの配布はエアドロップという代替手段が受け入れられたため、廃れた。