ニュース解説
仮想通貨規制にも関連するFATFの相互審査とは? 日本は10月末から立ち入り審査
評価結果が悪いと国際金融上のペナルティを受ける可能性もある
2019年6月28日 06:10
金融活動作業部会(FATF:Financial Action Task Force)はFATF勧告の解釈ノートについて、2019年2月に発表した「仮想通貨を含む新技術に関する解釈」を正式に採択すると6月21日に発表した。FATFに加盟する36か国2地域および、9つのFATF型地域体(FSRB)からなる190か国以上の国と地域は、今後1年間で新たなルールに沿った法整備などに取り組むこととなる。
FATFは、マネーロンダリング(ML)とテロ資金供与(FT)対策の国際基準であるFATF勧告の策定と、その履行状況について加盟国間で相互審査を行う国際的な枠組みだ。直接の加盟国は日本を含む36か国と2地域。9つの地域にあるFSRBを含めると、その影響力は世界190か国以上に及ぶ。
FATFの主な活動は、先に述べたFATF勧告の策定である。FATF勧告は加盟国に対して、マネーロンダリングとテロ資金供与への対策(AML/CFT)を、各国の法令などを通じて実施することを目的とする。マネーロンダリング(ML)とテロ資金供与(FT)は、国をまたいで行われるため、世界中ですべての国が一定の水準で対策を行わなければ、防止することができないのだ。FATF勧告は加盟国に対して事実上の強制力を持つ命令となっている。
FATFの相互審査
FATFの活動として、加盟国は相互審査を行い、AML/CFTの実施状況について互いに確認を行っている。各国は約10年ごとに監査を受ける。FATFは現在、「『40の勧告』の法令等整備状況の評価」(勧告評価)と「11項目の有効性の評価」(有効性評価)を策定している。相互審査では、これらを合わせた51項目について、AからDの4段階で評価を行う。評価軸は法整備と有効性だ。
相互審査において、悪い評価を受けると「監視対象国」に認定され、国際金融などにおいてさまざまな制限を課せられることになる。具体的には各国の金融機関に対し、監視対象国下にある金融機関との取引審査が厳格化される。結果的に、監視対象国は国際取引の遅延や取引自体を回避されるといった事態に陥る。国が悪い評価を受けると、そこで営業する金融機関などあらゆるビジネスに悪い影響が出てしまうのだ。
非監視対象国にも、重点フォローアップ(Enhanced Folow-up)という補欠合格的な区分がある。いずれの国も相互審査後は要改善項目の見直しに取り組むわけだが、重点フォローアップの国は、合格ラインを完全に満たす通常フォローアップの国よりも頻度の高い報告義務が課せられる。
日本の相互審査は2019年10月末に実施予定
日本は2009年に行われた第3次FATF相互審査で、49項目中25項目が要改善という厳しい評価を受け、重点フォローアップ入りした。その後、すべての項目の改善を終えたのは2016年10月のことだ。
FATFは現在、第4次相互審査を実施中だ。日本の相互審査は10月の最終週から実施される予定となっている。審査結果は2020年夏頃に公表される。すでに36か国中の23か国が第4次相互審査を終えたが、合格ラインを満たす国はイギリス、スペインをはじめとした5か国しかない。多くの国が第3次相互審査で日本が受けたものと同じ重点フォローアップの判定を受けている。
昨今、仮想通貨関連の規制が急ピッチで策定されてきたことも、FATFの相互審査に起因するものと言える。そのかいあって、現在の日本の規制状況は、少なくとも仮想通貨に関しては改訂されたFATF勧告をカバーしたものとなっている。FATFは今回、仮想通貨交換所のライセンス制度などを40の勧告に新しく盛り込んだが、日本ではすでに規制済みの内容が大半だ。順当に行けば、FATF勧告で低評価という事態は避けられるのではないだろうか。