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「ビットコインは法で保護される財産」中国の裁判所が初判断

通貨としての合法性は否定。マイニングを通じて得られる商品と認定

(Image: Shutterstock.com)

2013年に購入したBitcoin(ビットコイン)が、取引所サイトの閉鎖で取り戻せなくなった。取引所はユーザーに賠償する必要があるのか——。

杭州インターネット裁判所は7月18日、ビットコインの財産権侵害を訴える中国初めての民事訴訟に対し、判決を下した。訴えそのものは「立証不十分」と却下したものの、ビットコインを「通貨としての合法性はないが、バーチャル通貨としての商品価値があり法律で保護される財産」と認め、ビットコインを財産として認定した初の司法判断となった。

取引所の公式店舗から購入、1年後に閉鎖で資金戻らず

原告の呉氏は2013年、アリババのECサイトに出店していた業者からビットコインを購入。1万9920元(約31万円)を支払った。この業者は、ビットコイン取引所「FXBTC」のオフィシャル店舗を標ぼうしていた。だが、取引所は2014年5月に突然「運営停止」を発表。ユーザーは預けていた資産を引き出せなくなった。

呉氏は「FXBTCから2.69ビットコインを購入していた」とし、FXBTCは閉鎖に当たって呉氏に何ら対応をせず、巨大な経済損失を与えたと主張している。また、ビットコインの売買を禁止しているにも関わらず、業者の審査を怠っていたとして、自身がビットコインを購入したアリババのECショップにも連帯責任があると訴えた。

訴えそのものは立証不十分で棄却

結論から言えば、呉氏の訴えは棄却された。訴訟には2つの争点があり、1つは呉氏がビットコインを購入したアリババのECショップが、FXBTCと一体で経営されていたのかという点だ。それが証明されなければ、FXBTCの責任は問えないが、裁判所は「原告の立証が不十分」と判決文で述べた。裁判所は「原告が1万9220元を支払った記録も、ビットコインを取得した記録も、そして取引に関する契約の証拠も提出されなかった以上、原告の訴えを認められない」と指摘した。

だが、もう一つの争点である、「ビットコインが価値、希少性を帯びた支配できるバーチャル財産として法律の保護を受けられるのか」について、裁判所は「合法な通貨ではないが、財産としての価値、権利を有する」と判断した。

「マイニングを通じて得られる」商品と認定

中国では、インターネットに存在するバーチャル財産は法律の保護を受けられる一方、ビットコインなどインターネット環境で生成される仮想通貨について明確なルールがない。

裁判所は、中国人民銀行は仮想通貨の法的地位を認めていないが、「商品の財産属性」までは否定していないと述べ、仮想通貨が「バーチャル財産」の構成要件を満たすかを検討した。下記の判断基準を挙げ、仮想通貨がバーチャル財産に相当するとの判断を下したのだ。

  • マイニングを通じて得られ、労働による商品だと考えられる。
  • 金銭を通じてやり取りでき、収益も発生する。
  • 使用価値、交換価値を持つ。
  • ビットコイン総量は2100万で、無制限に供給されることがなく、簡単に取得できるものでもない。

杭州インターネット裁判所の裁判官は、判決に補足し、「投資を行うときは、リスク防止を十分にし、理性を持ってやってほしい。取引相手が必要な資格を持っているか見極め、取引データを保存すること。もしものとき自分の権利を守れるよう、証拠をきちんと残しておいてほしい」と呼びかけた。