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Facebook使えない中国が仮想通貨リブラを警戒する理由。キャッシュレス大国の新たな脅威に

中国産仮想通貨の研究加速か

(Image: Ascannio / Shutterstock.com)

中国ではFacebook(フェイスブック)にアクセスできない。にも関わらず、中国の金融当局者はフェイスブックが2020年に発行を予定する仮想通貨「Libra(リブラ)」に多大な関心を寄せている。

人民銀行弁公庁の周学東主任は12日の記者会見で、リブラについて質問を受け、「人民銀行としても注視している。法定通貨だろうが、最近出てきた仮想通貨だろうが、我々の間で共通認識となっているのは、マネーロンダリングやテロへの資金源となることを防ぎ、情報保護の観点からも、監督管理に置くべきだということだ」と述べた。周主任は、「中国においては、法で守られるのは人民元だけ」と強調した。

中国社会科学院委員で、国家金融発展実験室理事長の李楊氏も同日、モバイル決済とイノベーションサービス産業をテーマにしたフォーラムで、「通貨は国家の主権であり、大国は通貨へのコントロール権を放棄するわけにはいかない」と述べた。

中国人民銀行調査統計司の盛松成前司長も文章を発表し、「リブラは手数料を取ることなく、海外送金を可能にする。世界から資金が流入するだろう。間違いなく発展途上国の通貨の力に影響を及ぼす」と警戒感を表明し、「中国は完全に市場が開放されておらず、人民元の国際化も道半ばだ。リブラの脅威からどう防御するかはしっかり考えないといけない」とした。

中国人民銀行は、2014年に専門家チームを作り、中央銀行が発行するデジタル通貨(CBCC)の研究を始め、2017年には深セン市にデジタル通貨研究所を設立した。

また、中国ではアリババのアリペイ(支付宝)、テンセント(騰訊)のWeChat Pay(微信支付)のモバイル決済が普及しており、それぞれ10億人を超えるユーザーを抱える。

同国は官民ともにキャッシュレス先進国であり、だからこそ、フェイスブックの仮想通貨に敏感になっているといえる。

李楊氏は、「人民元だけでなく多様な通貨に対応するリブラの登場は、アリペイやWeChat Payの優位性をも脅かすかもしれない」と語った。

中国人民銀行の王信研究局長は7月8日、「中央銀行がデジタル通貨を直接発行するのは、通貨政策にプラスになると考えている。今後、デジタル通貨発行の研究を進めていく」と述べており、リブラの外圧によって、中国の“国産仮想通貨”の研究はさらに加速しそうだ。