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「ステーブルコイン発行者が倒産しても現金を取り戻せるのか」IMFが2通りの規制を提言

運営企業による裏付け資産の確保・中央銀行への預入

(Image: Shutterstock.com)

国際通貨基金(IMF)は、法定通貨に連動する暗号通貨であるステーブルコインを真に安定した存在にするために、2通りの規制の方法を提言した。一つは、ステーブルコインの運営企業が、消費者保護に足る十分な資産を保有している状態を規制で求めること。もう一つは、消費者がステーブルコインを得るために支払った法定通貨を、中央銀行に預けるよう義務付けることだ。

ステーブルコインは本当に安定している?

値動きが激しく、投機の対象となっているビットコインなどの仮想通貨に対し、法定通貨に価値が連動するため安定しているとされるステーブルコイン。Facebookの仮想通貨「リブラ」(Libra)も、米ドル、英ポンド、ユーロ、日本円、シンガポールドルに連動するステーブルコインの枠組みを採用している。だがIMFが26日にブログで投稿した文章は、「ステーブルコインは、本当に安定しているのか」と根本的な問題を提起した。

「ステーブルコインの発行者は、発行するコインに対する信頼を、自力で生み出さなければなりません。ステーブルコインの所有者がそれを現金と交換したければ、発行者は即座にそれを受け入れます。しかし、発行企業が経営破たんしても、ステーブルコインの所有者はお金を取り戻せるのでしょうか。ステーブルコインのパニック売りが起きても、発行企業は対処できるのでしょうか」

IMFはこういった懸念に対応するため、規制当局は所有者が預けた法定通貨の安全性を確保する必要があるとした。

そのための手段の一つは、ステーブルコインの発行企業が「安全で流動的な資産」を保有し、その資産がコインホルダーを損失から保護するのに十分であることを要求する。さらにステーブルコインの発行企業そのものを規制の対象とすることだと説明した。一方、銀行業務を行う気がない企業に銀行並みの規制を導入するのは簡単ではないと、追記した。

中央銀行との提携も選択肢

もう一つの手段は、ステーブルコインの購入者が発行企業に支払った法定通貨の全てを中央銀行に預けるよう義務付けることだ。

IMFは「これは目新しい解決策ではない」として、中国人民銀行が、モバイル決済サービスを提供するアリババのアリペイ(支付宝)と、テンセント(騰訊)のWeChat Pay(微信支付)に、消費者の前払い金を100%預けるよう義務付けていると紹介した。

IMFは、ステーブルコインの購入に使われた法定通貨を中央銀行に預けることで、「ステーブルコインが価値の保管庫としての魅力を高める」「ステーブルコインの発行企業が、現在の規制の枠組みに適合しているナローバンク(リスクが生じる貸付を行わない銀行)に近い存在になるため、規制上の位置づけが明確になる」という利点を挙げた。一方で「商業銀行と顧客の預金を巡る争いが激しくなる」とし、負の作用も指摘した。