仮想通貨(暗号資産)ニュース

政府税制調査会が仮想通貨に関する確定申告簡素化を検討、国税庁「仮想通貨の計算書」の提供も視野に

第1回専門家会合で経済社会のICT化等に伴う納税環境整備のあり方について議論

 内閣総理大臣の諮問機関である政府税制調査会は10月24日、第1回「納税環境整備に関する専門家会合」を開催した。仮想通貨など新たな経済取引の普及や働き方の多様化に伴い、これからの納税環境整備のあり方について議論を行った。内閣府は、同会合における関連資料を公開している。

仮想通貨の定義(内閣府外部有識者ヒアリング資料より引用、以下同)

 「納税環境整備に関する専門家会合」は、10月17日に開催された政府税制調査会の第18回総会にて討議された経済社会のICT化等に伴う納税環境整備のあり方について、今後の総会における議論の素材を整理する目的で設置された、少人数の専門家会合である。

 第1回の会合では、金融庁より資金決済に関する法律に基づく自主規制団体に正式認定された一般社団法人日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)を始め、一般社団法人シェアリングエコノミー協会、財務省関税局調査課といった外部団体等を招き、現状のヒアリングが行われた。

 これまで確定申告や、そのための記帳等が必要であった納税者は一部に限られていたが、仮想通貨の取引など新しい経済取引の普及に伴い、確定申告等が必要な納税者の数は増加しているという。先の総会において納税実務関係の意見として、そうした納税者の数は今後も増加することが見込まれることから、簡易に、かつ、適正な申告ができる環境の整備に向け早急に取り組む必要があるのではないかという議題が挙っている。納税環境の整備として、経済社会のICT化を踏まえ、電子データそのもののやり取りや、マイナポータル(内閣府のマイナンバー総合サイト)の活用なども視野に入れ検討すべきではないかなど、さまざまな意見が出たという。

 特に仮想通貨取引については確定申告での報告が複雑であるという意見が多く聞かれることから、納税者が自身の取引情報を簡易に把握できるような仕組みが構築できないかという意見に対し、仮想通貨取引やシェアリングエコノミーによる所得については、仲介業者(仮想通貨交換業者・プラットフォーム事業者)が源泉徴収を行う仕組みを検討してはどうかなど具体的な意見が挙っている。しかし、現行制度上は、源泉徴収義務は一定の「支払を行う者」について課されているが、一般的に仲介業者は「支払を行う者」には該当しないことから、源泉徴収義務を課すのは難しいのではないかという意見もある。

 同会合では、JVCEAによる仮想通貨の意義および同協会自主規制規則に関する報告が行われた。仮想通貨市場の分析から仮想通貨に係るこれまでの法制度整備の経緯、一号仮想通貨、二号仮想通貨など仮想通貨の定義等を改めて報告している。

トークンの法的分類

 また、最後に財務省関税局調査課から申告等の環境整備に関する方針が報告された。現在、国税庁が主催する「仮想通貨取引等に係る申告等の環境整備に関する研究会」において、仮想通貨取引に係る申告の利便性向上に向けた方策を協議中だという。国税庁は、2018年分の確定申告より、個人納税者に対し「仮想通貨の計算書」を提供予定、仮想通貨交換業者各社は、顧客(納税者)が「仮想通貨の計算書」を簡易作成できる「年間報告書」の提供を行う方針であり、仮想通貨交換業者の対応については、仮想通貨交換業者各社のWebサイトにて公表するなど、方策を協議していることを明らかにした。

 さらに国税庁の研究会では、相続手続の整備についても協議中であることを報告した。相続手続の整備に関しては、被相続人から相続人に口座残高を移行するための手順を明示する等、相続時の対応を整備する。仮想通貨交換業者に対して、相続人等から当該顧客が亡くなった日(相続開始日)における「残高証明書」等の交付依頼があった場合には、「残高証明書」等を発行する方針だという。これらの仮想通貨交換業者の対応についても、仮想通貨交換業者各社のWebサイトにて公表する予定であるという。

仮想通貨交換業者の対応(イメージ)