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中国、中央銀行のデジタル通貨は「現金と電子マネーのいいとこどり」

「いつでも出せる状態」と詳細を説明。「仮想通貨の処理速度では対応しきれない」との指摘も

(Image: Shutterstock.com)

中国の中央銀行である中国人民銀行の穆長春決済司副司長は8月10日、中国で開かれたフォーラムで、人民銀が近く発行するデジタル通貨について、「いつでも出せる状態」とし、詳細を明らかにした。

人民銀は、銀行などの金融機関にデジタル通貨を発行し、金融機関が一般消費者に対し、法定通貨と交換する形でデジタル通貨を提供する「二層運営システム」を採用する。その理由として穆氏は、「中国は教育やネットの普及具合、リテラシーに差がある。格差が大きい経済体で、中央銀行が直接国民にデジタル通貨を発行するのはリスクが大きい」と述べた。

また、人民銀が発行するデジタル通貨について、「中央銀行の社会や国民に対する負債であり、国民や金融政策に対する責任を果たすために、中央集権的な管理モデルを採用する」とも語った。

人民銀のデジタル通貨は、現金を代替する一方、電子マネーを代替する存在ではないと説明。「現在の現金は偽造がたやすく、マネーロンダリングやテロ資金に使われる恐れもある。一方で、現存する電子マネーも、匿名決済などのニーズに対応しきれていない。中央銀行のデジタル通貨は、現金と電子マネーの問題点をクリアするツールにもなる」と述べた。

また、穆氏はビットコインやイーサリアムなど仮想通貨の取引処理速度では、中国のネットショッピングのピーク期に対応しきれないと指摘。「デジタル通貨発行に際して、ブロックチェーン技術だけを採用することはない」とした。

2019年はFacebookが仮想通貨リブラ・プロジェクトを発表するなど、大手企業や中央銀行のデジタル通貨発行論議が盛り上がっている。穆氏は「2014年夏、周小川総裁が『中央銀行がデジタル通貨を発行する可能性について、検討しよう』と提案した。その時から課題を一つ一つクリアし、5年かけて成果を得ることができた」と述べ、中国が一足早くデジタル通貨の研究に着手していた点を強調した。