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2020年、分散型金融は1000億円市場に成長と予想
DeFi上の預金残高は昨年末310万ETHを記録=CoinGecko年間レポート2019
2020年2月4日 06:00
2019年は分散型金融(DeFi:Decentralized Finance)分野が大きな前進を見せた年と分析するのは、仮想通貨のグローバルランキングサイト「CoinGecko」だ。DeFiは、ブロックチェーンを活用したアプリケーションによって構成される金融システムを指す。
同社が発表する仮想通貨に関する2019年年間レポートでは、この1年にDeFiが実現させてきた新たな金融システムに触れ、その重要性を説き、2020年代以降も成長し続ける注目の分野として報告した。本稿では、同書からDeFiに関する内容に絞って紹介する。
DeFiの重要性
CoinGeckoは、ブロックチェーン技術のこれまでの10年は成熟期であったと分析をする。そして2020年は新たな10年の始まりであり、より多くのブロックチェーンプロダクトが一般に浸透する時期になるという。2019年にいくつものプロダクトが登場したDeFiは、その一翼を担い、2020年も成長は続くと同レポートは予想した。
中央集権化されている現在の金融システムには、およそ世界の4分の1にあたる17億人がアクセスできておらず、資産マネジメントツールへのアクセスも限定的なものになっている。社会的信用や居住環境等の問題から銀行口座等の開設ができないという。簡単にいえば、世界には17億人もの人々が既存の金融システムの蚊帳の外にいるのだ。
また、利用者にとっても課題がある。国際送金には平均して6.8%程度の手数料がかかり、着金までには3営業日は必要であるという。また、国や地域によっては口座の凍結やサービス拒否など銀行からの検閲や差別など中央集権であるがゆえの問題も生じている。取り付け騒ぎも少なくない。
しかし、中央集権者の存在しないDeFiは口座を開設する必要がなく、携帯電話(スマートフォン)とインターネットさえあれば、国際的な金融サービスに誰でも参加が可能になる。蚊帳の外だった17億人も、スマートフォンさえあればアクセスすることができる。
また、DeFiは格安で高速な国際送金を実現させている。どのような場所にいても、平均してEthereumでは手数料は2円程度、20秒以下で送金が可能であると同レポートは報告した。
さらには、DeFiは社会的地位やクレジットヒストリー(信用情報)、政治的信条に関わらず、誰でも平等に扱うことがメリットであるという。DeFiの狙いは、より効率的な金融市場を作ることとまとめている。
DeFiの成長
CoinGeckoの年間レポートでは、DeFi分野の成長をエコシステム内でサービスのためにロックされた仮想通貨(Ethereum)量で測定している。従来の金融機関でいえば、ロックされた仮想通貨は銀行が持つ預金残高に相当する。2019年にDeFiのためにロックされたEthereum(ETH)は、200万ETHから最終的には310万ETHまで増加した。1年間で、1億6000万米ドル相当(174億円相当)の増加だ。中でも人気のDeFiは、貸出とデリバティブだという。
このような結果からCoinGeckoは、すでにDeFiによる金融業界の再定義(reDefining)は始まっていると見ている。2020年には、エコシステム内に1000億円以上の仮想通貨がロックアップされると予想している。
DeFiによる現在のサービスの多くは、レンディングとトレーディング関連だが、今後はスマート債権、金利スワップ、分散オプションマーケットなど新たなデリバティブのローンチが見込まれている。
そのほかにも考えられるものとして、金融の伝統的市場で使われるロンドンインターバンクレートのようなレファレンスレート(為替取引のレートのようなもの)が存在しないが、このような分野でのDeFiの活用も考えられるとした。
また、未来型の組織のあり方として注目される、スマートコントラクトを応用する自律分散型組織DAO(Distributed Autonomous Organization)の実現を、DeFiが推進するという。同社は、複数のプロジェクトがこの機能を実装すると予想している。
記事「2019年のビットコインは投資リターン95%増」「仮想通貨デリバティブ市場が拡大。取り扱う交換所数は1年で12倍」および「Tetherの市場占有率が拡大。仮想通貨全体で4位まで成長」では、CoinGeckoの年間レポートから仮想通貨関連の市場概況と仮想通貨交換所の動向、ステーブルコインに関する分析を紹介した。そちらも併せて読んでいただきたい。