仮想通貨(暗号資産)ニュース

日本政府、仮想通貨「暗号資産に呼称変更」や「ICOトークンが金商法対象に」等の改正案を閣議決定

資金決済法と金融商品取引法の改正案を本国会提出へ。2020年6月までに施行する見通し

金融庁の公開資料より引用、以下同

 日本政府は3月15日、仮想通貨のルール明確化と制度整備を目的とした資金決済法および金融商品取引法(金商法)の改正案を閣議決定した。改正案には、法令上の仮想通貨の呼称を「暗号資産」に変更するほかに、暗号資産をコールドウォレット等で管理することの義務化、収益分配を受ける権利が付与されたICO(Initial Coin Offering)トークンは金商法対象であることの明確化など、金融庁がこれまで「仮想通貨交換業等に関する研究会」にて討議を行ってきた結果が盛り込まれている。

 金融庁は記者向け説明会にて、本国会での法案成立を目指し、2020年6月までに施行する見通しであることを明らかにしている。

 資金決済法に関する改正案では、仮想通貨の呼称変更については、国際的な動向等を踏まえ、法令上の「仮想通貨」の呼称を「暗号資産」に変更するとした。

 ホットウォレット(オンライン)で管理していた暗号資産が流出する事案が相次いだことから、暗号資産の流出リスクへの対応として仮想通貨交換業者に対し、業務の円滑な遂行等のために必要なものを除き、顧客の暗号資産は信頼性の高いコールドウォレット等で管理することを義務付ける。ホットウォレットで管理する暗号資産については、別途、見合いの弁済原資(同種・同量の暗号資産)の保持を義務付けるとした。

 仮想通貨交換業者の過剰な広告・勧誘への対応として、虚偽表示・誇大広告の禁止、投機を助長するような広告・勧誘の禁止など、広告・勧誘規制を整備する。

 ウォレットアプリの提供など暗号資産の管理のみを行う業者への対応として、FATF(マネロン対策等を扱う国際会議)が、暗号資産の管理のみを行う業者(カストディ業者と呼ぶ)について、各国協調して規制を課すことを求める勧告を採択したことを受け、カストディ業者に対し、暗号資産交換業規制のうち、本人確認義務や資産の分別管理義務など、暗号資産の管理に関する規制を適用する。

 移転記録が公開されずマネーロンダリングに利用されやすいなど匿名性の高い問題がある暗号資産への対応については、仮想通貨交換業者が取り扱う暗号資産の変更を事前届出とし、問題がないかチェックする仕組みを整備する。仮想通貨交換業者が取り扱う暗号資産を審査する自主規制機関とも連携をしていくことが盛り込まれた。また風説の流布・価格操作等の不公正な行為を禁止や、仮想通貨交換業者が倒産した場合に預かっていた暗号資産を顧客に優先的に返還するための規定を整備するとした。

 暗号資産を用いた新たな取引への対応として、国内の暗号資産の取引の約8割を占める証拠金取引については、外国為替証拠金取引(FX取引)と同様に、販売・勧誘規制等、金融商品取引法上の規制を整備するとした。

 ICOへの対応については、投資家のリスクや流通性の高さ等を踏まえ、収益分配を受ける権利が付与されたトークンについては、金融商品取引法が適用されることを明確化する。株式等と同様に、発行者による投資家への情報開示の制度やトークンの売買の仲介業者に対する販売・勧誘規制等を整備する。

 また、情報通信技術の進展を踏まえたその他の対応として、金融機関間での国際的な店頭デリバティブ取引の増加を踏まえ、国際慣行である担保権の設定による証拠金授受について、円滑な清算を可能とする規定を整備するとした。その他、刑事訴訟法等と同様、金融商品取引法の違反事案の調査において、電子的に保管されたデータの差押え等を可能とする規定を整備するなどが法律案として盛り込まれた。

 なお、これらについて金融庁は、法律案および理由について71ページにもおよぶ「情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案」をWebサイトにて公開している。また関係資料として、概要、説明資料、法律案要綱、新旧対照表、参照条文についても公開。ただし金融庁は、これら関係資料はあくまで国会審議の参考用として作成されたものとしている。資料は、法律案に併せて参照するといいだろう。