Bitcoin Cash「2018年11月ハードフォーク」ABCとSVの対立が解消されないまま分裂か

　Bitcoin Cashは、2017年8月1日のハードフォークによりBitcoinのチェーンから分岐して誕生した新しい仮想通貨だ。ハードフォーク計画の是非、新しい通貨への対応方針、名称の問題、コミュニティの対立などでさまざまな混乱が生じた。2018年11月の16日1時40分頃に予定されているBitcoin Cashのハードフォークにおいては、Bitcoin ABCとBitcoin SVという団体がそれぞれ独立したアップデート仕様を提案し対立していることから、2017年当時と同様に波乱含みの様相を帯びてきた。

　Bitcoin ABCとBitcoin SVという団体がそれぞれ独立したアップデート仕様を提案し、お互いに譲歩することなく対立を深めているという問題が現在のBitcoin Cashには存在する。その対立が解消されない状態で2018年11月にBitcoin Cashの大規模アップデート、つまりはハードフォークと呼ばれる「ブロックチェーンが旧仕様と互換性のない新仕様に移行」という変更が実施されると、Bitcoin ABCとBitcoin SVがそれぞれ支持する互換性のない2種類のチェーンに分裂し、結果として新通貨が発生する可能性もあると言われていた。

　以下に述べるBitcoin ABCとBitcoin SVに対する見解は、筆者がこれまでに収集した情報を基に、駆け引きだけが目的の発言、不純な動機、意味不明のものを除外して再構成したものとなる。もしも、本稿を読んで解釈が異なる場合には、ぜひツイートなどでご指摘していただきたい。

　当初はBitcoin ABCの方が圧倒的に優勢だと思われていたため、Bitcoin Cash（BCH）はハードフォーク後に、Bitcoin ABCが参照するチェーンにブロックチェーンネットワークが引き継がれる前提で語られることが多かった。たとえば、ある仮想通貨交換所がBitcoin ABCとBitcoin SVのどちらのチェーンを選択するか態度を明らかにしない場合、Bitcoin ABCを選択したものと勝手に解釈されることも珍しくなかった。

　しかし、マイニングの実施情勢である「ハッシュパワー」の大小で判断すると、Bitcoin SVの方が圧倒的に優勢になってきた。ノード数の比較では、Bitcoin ABCの方が圧倒的に優勢であるという。そのため、今回のBitcoin Cashのハードフォークにより、Bitcoin ABCとBitcoin SVに分岐したどちらのチェーンが「Bitcoin Cash（BCH）の名前やチェーンを受け継ぐのか」ということが不透明な情勢となった。ハッシュパワーだけを見て「ハッシュウォー」で勝負が決まるような単純な話ではないのだ。

　Bitcoin CashがBitcoin ABCとBitcoin SVという互換性のない2種類のチェーンに分裂し、結果として新通貨が発生する可能性ばかりが話題になるが、他方ではどちらかのチェーンしか存続しない可能性も浮上している。本稿執筆時点では、Bitcoin Cashのハードフォークが引き起こす混乱と、最終的な着地点が見いだせないというのが正直な見解なため、これ以上の問題整理と思考飛躍は実施しない。

　国内の各仮想通貨交換所のほとんどは、Bitcoin ABCとBitcoin SVのどちらの参照チェーンを支持するのか、新通貨が発生した場合にどのように対応するのかといったことについて、あまり態度を明らかにしていない。

　仮に仮想通貨交換所がBitcoin SVに対応すると決定した場合には、一般社団法人日本仮想通貨交換業協会（JVCEA）への届出と承認が必要となる。そういった事情が「未発表」の要因だと思われるが、本稿掲載の24時間後にはユーザーにとって事態が切迫している可能性もあるため、速やかなる情報開示を期待したい。

　なお、本稿の最後では、現状整理と今後の参考資料として、各仮想通貨交換所の新通貨発生時などの対応を一覧表にまとめたので参考にしていただきたい。

　一覧表ではBitcoin ABCを「既存通貨」、Bitcoin SVを「新通貨」と仮に表記したが、この表記は情勢次第では変更する可能性がある。今後も可能な範囲で、Bitcoin Cashのハードフォークに関する情報を随時報告していく。